キャラクターの作り方(1)
今回は、ゲームキャラクターの作り方について、
お話ししていこうと思います。
こちらの内容は、
5月末日にツイキャスでお話させていただきました。
音声がよろしい方は、こちらをご視聴ください。
生田美和のCafe de Game「5月のツイキャス」
ゲームには、
魅力的なキャラクターが数多く登場します。
特殊能力を持った仲間たちや敵たちは、
みな魅力にあふれています。
そのキャラクターを考えるのも、
ゲームクリエータのお仕事のひとつです。
今日は実際の開発現場ではどのようにして
ゲームのキャラクターたちを生み出しているのか?
というところにスポットを当てみようと思います。
今回も私自身の経験から来る、
生田流の考え方ですので、「絶対これが正解!」
というものではありません。
あくまで一例として、参考にして下さいね。
(1)主人公の作り方
ゲームシナリオを考える時に、
「主人公がどんな人物なのか?」ということは、
とても大切なことです。
男性なのか、女性なのか。
子供なのか、大人なのか。
人間なのか、獣人やモンスターなのか。
はたまたアイテムなのか、などなど……。
主人公は、いかなる人物か――?
ここが確定しないことには、その主人公が、
生き生きと動き出すシーンをイメージできず、
シナリオを書くのも難しくなってきます。
では、どうするのか?
主人公の性別を決め、種族を決め、
金髪ツンツン頭などの外見特徴を決め、
性格や口調を決めれば、いいのでしょうか?
実は、これではよくないのです。
考えなくてはならないのはゲームの主人公。
ですので、年齢や外見や、物語として、
どういう役割を持たせるかという以前に、
どうしても決めねばならないことがあります。
それは、遊びです。
このゲームの主人公に、
どんなゲーム的な遊びを担わせているのか?
ゲームでは、なにをおいてもこの部分が、
もっとも重要なポイントになってきます。
つまり、主人公の遊びのデザイン――。
主人公に、どんな遊び機能を搭載させるか?
という設計です。
例えばですが……。
アイテムを使うゲームとなれば、
その主人公はアイテムを駆使して、
ダンジョンの謎を解いたり、敵を倒したりという、
遊びを担うと予想できます。
それならば、主人公は、
アイテムと関わりの持たせやすい
発明家とか、冒険家とかがいいかな?、と
おおよそのアタリがつけられるわけです。
つまり、ゲームの主人公には必ず、
「ゲーム性からくる主人公の遊ばせ方」というものがあり、
そこに、後からキャラクター性を肉付けしていくわけです。
では、ちょっと例題を出してみます。
主人公の設定をどう考えていくか?、という例題です。
ご自分が開発現場で新しいゲーム作りに携わっているのを
想像しながら、チャレンジしてみてくださいね。
(例題)
このゲームに相応しい主人公は、
どんな主人公でしょうか?
様々な剣を持ちかえ、
多彩なアクションを楽しむゲームシステムです。
舞台は、剣と魔法のファンタジーの世界です。
いかがでしょうか?
ちょっとお時間有る方、チャレンジしてみてください。
ファンタジー世界で、
剣を取っ替え引っ替えするアクションゲーム。
その主人公です。
こういうゲームを作ろう!となった時に、
みなさんなら、どんな主人公を提案したいでしょうか?
では、解答編に移りますね。
非常にオーソドックスな例になりますが、
こんな主人公はどうでしょうか?
(解答例)
主人公は、騎士の王国の少年。
ある日、何者かの悪意ある魔法により、
王国全土が溶けない氷に閉じ込められる。
凍りつく王国から逃げ出せたのは、
騎士団にかばわれた、子供たちだけ。
少年はその中の一人。
凍りつき、時が停止した王国を救うには、
なんでも斬れるという伝説の剣が必要。
少年は、この伝説の剣を求めて、
旅立っていくことになる。
こちらが、オーソドックスな解答例です。
少し補足しますが、この解答例は、
わかりやすくするため、説明を多めにしています。
実際に書類をまとめていく時には、
開発現場で共有できていることもあるので、
三行くらいにおさまる設定かと思います。
では、話を戻しまして……。
例題の答えが、
なぜこのような解答になるのでしょう?
実はこの解答例は、例題に盛り込まれた
「見えざるオーダー」に答えた形になっています。
見えざるオーダー――。
ここがゲームならではの考え方になります。
では、この解答例を参考に、
どうしてこの設定にしなければならないのか、
説明していきたいと思います。
<なぜ、少年なのか?>
まず、主人公を「少年」にした理由から説明します。
これは、「主人公=ユーザーさん」という部分に、
配慮した設定になっています。
主人公を、
剣に長けた聖騎士や勇者に設定しても、
ユーザーさんは、
ゲームに慣れるまで時間がかかります。
ですので、
すぐさまカッコイイアクションが出来るとは、
限らないものなのです。
そこで……、
どこかに「新米」とか「子供」というような、
「剣を使って戦うのにはあまり慣れてないよ」
とわかる設定をいれておきます。
そうすると、実際のユーザーさんのプレイと、
主人公の設定とが乖離しないですむのです。
呪いで剣の使い方を忘れてしまっているとか、
怪我のため利き腕では剣を持てなくなったとか、
魔法は大得意だけど剣はからっきし……、
なんていう設定もよく使われますね。
<なぜ、伝説の剣を求めるのか?>
次に、「伝説の剣を求め旅立つ」という設定です。
こちらは、ゲームシステムに合わせるための
設定になっています。
ゲームシステムが、
「色んな剣を持ち換え、アクションを楽しむもの」
なので、主人公の目的もそこにかぶせているのです。
主人公の目的自体が、
「伝説の剣探し」となっていれば、
色んな剣を、「もしかしたら伝説の剣かも?」
と探し求め、それらの剣を試し斬りし、
取っ替え引っ替えしては、遊んでいくことができます。
主人公の目的の置き方で、
ゲームシステムとの相性を高めているわけですね。
<なぜ、王国が凍りつき、
子供しか逃れられなかったのか?>
最後に、
「王国が凍りついて停止した」という部分と、
「騎士に庇われた子供しか逃れられなかった」
という部分。
このふたつの設定について、説明します。
こちらは、わかりやすく言うと、
先に上げた主人公の設定を強化するためのものです。
ちょっと考えてみてください。
新米なり子供なりが、色んな剣を持ち換えて、
なにか大きな目的を果たそうとしている――。
これは、少々奇妙な状況ですよね?
その大きな目的が大切なものであればあるほど、
戦うことが出来る戦士や兵士、大人たちは、
一体何をしているのだろう?と思ってしまいます。
そこで、こちらの設定――
「王国が凍りついて停止した」
「騎士にかばわれた子供しか逃れられなかった」
が必要になってくるわけです。
「大人が動けない理由」を設定に組み込んでおくと、
ゲームの世界に、嘘がなくなります。
つまり、主人公の状況を補強するための
設定の持ち方です。
いかがでしょうか?
先ほどのゲームシステムの説明からは、
ざっと、これくらいのオーダーが読み取れる、
ということなんです。
もちろんこれはあくまで一例です。
正解パターンは無限にあると思います。
もっとすごい設定も、
もっと奇抜な設定も持ってこれます。
ですが、大切なのは三点です。
まずひとつ。
ゲームシステムから来る主人公の設定は、
活かすべきだということ。
剣でのバトルが楽しいゲームなら、
剣士だとか、逆に剣は全く使えないとか、
「剣を使うこと」に着目した設定にします。
ふたつめ。
主人公の最終目的の持たせ方です。
主人公の目的は、ゲームシステムの目的に
かぶせていくといいです。
剣でアクションして遊ぶのだから、
「アクションするための剣を探す」
という目的にするわけです。
さいごみっつめ。状況の設定です。
何故「主人公」なのか?何故「今」なのか?
主人公しかいない、できないという状況、
今じゃないとダメだという状況を、考えておくこと。
まとめますと……
(1)主人公の設定は、ゲームシステムを元に考える
(2)主人公の目的は、ゲーム自体の目的にかぶせる
(3)主人公しかいない、今しかない、その状況を作る
ちょっとしたゲームシステムの情報だけでも、
これだけの要素に光を当てていくことができます。
それくらいゲームというのは、
要素要素が関連し、それぞれが、
深く影響しあって、成り立っているのです。
実際のキャラ作りでは、ここから更に進め、
年齢や性別や、衣装やイメージカラー、
喋り方や、性格設定などなど、
かなり突っ込んで考えていきます。
新しいヒーローやヒロインを生み出すのは、
とても楽しく、やり甲斐のあるお仕事です。
ここから先は、みなさんの個性を生かして、
さまざまなキャラを生み出していってくださいね。
では、今回はここまでにします。
次回は、主人公と対をなす存在――
ラスボスや敵キャラクターの作り方について、
お話したいと思います。
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