« 2012年4月 | トップページ | 2012年6月 »

2012年5月18日 (金)

ゲーム開発者Twitterの心得(3)

 前回、「ゲーム開発者Twitterの心得(2)」の続きになります。

 今回は、自分が開発に関わったゲームが
発売された後のTwitterでの交流についてです。
 このシリーズは、これで最後になります。




(3)ユーザーのみなさんとの交流について

 Twitterは、とても交流がしやすく、
それゆえ、交流したくなるツールです。

 しかし、Twitter自体が現在も進化しており、
ユーザーさんのTwitterへの姿勢や、その使い方も、
日々変化しています。

 そんな中で、「これが間違いのない交流だ!」
というところまで確定していくのは難しいでしょう。

 そこで、2012年の現時点でのことですが、
私が気をつけているポイントをいくつかご紹介したいと思います。




①気分は天体観測

 自分が関わったゲームの感想について、
「面白かったですか?」とか「どこがよかったですか?」とか
ユーザーさんに、あれこれと質問したくなるものです。

 気合いの入った作品、大切な作品なら尚更でしょう。

 ですがユーザーさんに直接ご感想をうかがうことについては、
私は、気をつけるようにしています。

 ゲーム制作には大勢の人々が関わっているので、
関係者の方がそれぞれの言葉で「感想をください」、
と言い出したら、とんでもないことになります。

 リツイート狙いで開発者の気を引くような感想ばかり
になってしまっても、それは残念なことだと思うのです。

 それに、ゲームへの思いを綴るのに、
140文字という枠は足りないのではないでしょうか?

 やはり、詳しいご感想やご意見ご要望については、
開発会社さんへのアンケートハガキやファンメールなどで、
集めていくのが一番かと思います。

 なので、私の場合ですが
「開発者自ら感想を取りに行く」というような、
インタビュー方式ではなく、
「ふいに流れてくる流星のような感想を観測する」
という天体観測的なスタイルでいます。




②「記録」ではなく「記憶」に残す

 ユーザーさんがゲームのご感想をつぶやいている場合、
嬉しくて、ついリツイートしたくなることもあると思います。

 でも、自分にリプライされたものではない、@なしのつぶやき……
つまり、宛先のないユーザーさんの個人のつぶやきを
リツイートするのはどうでしょうか?

 これは、「どうしよう?」と迷われる部分だと思います。

 「開発者が喜んでいることを伝えたい」と言う気持ちは、
純粋な喜びと感謝から来るものだと、私は思います。

 Facebookの「いいね!」ボタンのような感じで、
Twitterのリツイートを使いたいこともあると思います。

 しかし、Twitterへの参加者が増え、
裾野が広がったことで、リツイートへの考え方も、
だいぶ事情が変わってきたようです。

 ユーザーさんの中には、
Twitterをメモがわりに使う方もおられますし、
複数のつぶやきをつなげていくことで、
独特な世界観とも言えるものをまとわせる方もおられます。

 開発者の中には、いわゆる「著名人」もいらっしゃって、
ユーザーさんのご感想を大量RTされる方もおられます。

 事実、それを喜んでらっしゃるファンの方も、
あのひとフォローしたらリツイートで埋まっちゃって大変!、
と思ってる方もいらっしゃるのです。

 こうしたTwitterの使い方や感じ方の違いから、
「公の場でつぶやいた」=「開発者がリツイートしていい?」
と、クエスチョンがついた感じになっているのが、
現状かと思うのです。

 Twitterは始めた時期やフォロワー数、
使い方や慣れ方によって、感じ方も考え方も様々です。

 色々な考えがある以上、自分の関わった作品だからと、
あれもこれもと片っ端からリツイートしてしまうのは、
少しですが心配な面もある……というのが私の考えです。

 そこで私自身は、ユーザーさんからのご意見ご感想は、
この胸に留め、次の作品に向かう力にしています。

 Twitter上で記録するのではなく、心に記憶したいのです。




③おとなな遠距離恋愛

 Twitterを長くやっていると、
自分が関わった作品のイベントや、その告知に
ばったりと遭遇することもあります。

 まずは、「うれしい!」という気持ちがあるでしょう。
そして、「参加したい」「広めたい」という気持ちも、
じわじわと出てくるものだと思います。

 ですが、ここはすぐにリツイートしたり、
イベントへの参加表明したりせず、状況をよく確認したいところです。

 例えばなのですが、
「あのイベントはリツイートしたのにこっちはしないのか?」
という不公平感が出てしまうのも困りますし、
「開発者が承認した」→「開発会社が承認」→「公式イベント!」
と、勘違いが加速していく場合もあるからです。

 ケースケースで確認するのがいいのですが、
開発内部にそうした担当者さんがいらっしゃらない場合もあります。

 そこで、基本的には、
ユーザーさん個人で行われるイベントについては、
そのユーザーさんたちの楽しみを邪魔しないためにも、
「うれしいなあ」という素直な気持ちを持って、
「その場に飛んでいきたい!」という情熱はグッと堪えて、
遠巻きにそっと見守りたい、というのが私の気持ちです。

 ちょっと遠距離恋愛の心持ちに似ていますね。




 私がTwitterで気をつけている立ち振る舞いについて、
三回に分けて、まとめてきました。

 ここで書いたことは私個人の現時点での解釈ですし、
時代が進み、ネット環境が進化していけば、
人々の考え方や好まれるルールも変わっていくのかもしれません。

 でも、きっと、考えの根っこは変わらなくって、
とても単純なことではないかと思っています。

 作品と開発チームを大切にすること――。

 ゲームは、それ単体では存在しません。
 大勢の開発者さんはもちろん、
営業さん宣伝さん、イラストレーターさんや背景さん、
声優さんや音響さんがいらして、生み出せるものです。

 そしてゲームというのは、
そのゲームを遊んでくださるユーザーさんがいて、
その方の体験を、冒険を、遊びを通して、
はじめて完成するのではないかと感じるのです。

 その作品を大切に思う気持ちで、
遊んで下さるユーザーのみなさんごと、まるっと、
大切にしていきたいですよね。

 ネットが発展した今は、Twitterを始め、
さまざまなところでユーザーさんの気持ちを知ることができます。
 ユーザーさんとの交流という点で、
こんなに恵まれた時代は、かつてなかったでしょう。

 この場を借りて、私の関わった作品について、
ご感想やご意見をつぶやいてくださるみなさまに、
深く感謝いたします。ありがとうございます。

 ゲームを好きなひとたちが、楽しい交流ができますように。

|

2012年5月15日 (火)

ゲーム開発者Twitterの心得(2)

 前回、「ゲーム開発者Twitterの心得(1)」の続きです。



(2)発売後のマナーについて

 ゲーム発売後も、発売前と同様に「内容」「スケジュール」、
このふたつについては発言を控えます。

 まずゲームの内容についてですが、
「発売から半年経ったから、そろそろ内容に触れてもいい」
ということはありません。

 攻略速度というのは、ひとそれぞれですし、
口コミでゆっくりと売れていく場合もあります。

 主人公たちがどんな運命をたどるか――。
などという、物語の核心にせまる内容には、
開発者という立場では、触れないほうがいいでしょう。

 次に、スケジュールについてですが、こちらは
開発さんの開発状況を、過去のものとはいえ、
表に出してしまうことになるので、あまり感心されません。

 大雑把な話なら構いませんが、
「何月ごろ、これこれをしていた」というのを詳しく語るのは、
避けるようにしましょう。

 一方、発売前にはタブーだった「開発者情報」については、
スタッフロールなどで明らかにされているものについてですが、
言及することが出来るようになります。

 ただ、その場合でも、ご自分だけで判断せず、
いつからアナウンスしていいか、またそのスタイルについても、
担当者の方に確認を取るようにしてください。

 自分が関わったゲームが発売されると、
つい製作時のエピソードなどを話したくなってしまうものですが、
そこは開発さんと歩調を揃えていきましょう。

 ネタバレは引き続き厳重注意です。

 まだ、遊んでいない人たちもいる――。
 これから遊ぶ人たちもいるかもしれない――。

 自分にとっては既に終わってしまったお仕事でも、
そのキャラのその冒険は、ユーザーさんたちの胸の中で、
今なお生き続けいるかも知れません。

 未来のユーザーさんの楽しみを奪わないように、
そしてまた、旧ユーザーさんの思い出を壊さないように、
開発者として配慮しましょう。

 作品を愛し続ける気持ちが、大切だと思っています。




 次回は、Twitterを通じた交流について、
私なりの考えですが、まとめていきたいと思います。

|

2012年5月14日 (月)

ゲーム開発者Twitterの心得(1)

 ご質問を頂いたので、私なりの
ゲーム開発者としてのTwitterでの振る舞いについて、
何回かに分けて、まとめていこうと思います。

 ですが、これは私の個人の考えです。
実際には、所属する開発さんやタイトルごとに、
守らねばならない約束事は違いますので、
個々のケースについては、担当の方と相談されてください。



(1)発売前のマナーについて

 ゲームの発売前、やってはいけないことは沢山あります。
まず第一に思いつくのは、「ネタバレを避ける事」だと思います。
 では、どんなことについて気をつけていくべきでしょうか?

  ・作品の内容

  ・開発者情報

  ・開発スケジュール

 以上が、ネタバレしてはいけない主な項目です。
開発に携わった方なら理解されていると思います。
 「守秘義務」という考え方ですね。

 しかし、開発関係者がTwitterを常用している場合、
なにげない発言から、情報がリークしてしまう可能性があるのです。
 例えば以下のようなつぶやきです。


 例1)「今やってる仕事はRPGなんですが、昔の同僚もいて楽しいです」

  →
    開発さんによっては、
    そのジャンルを開発することや関わっている開発者さんを、
    秘密にしたい場合もありますので、避けたほうがいいです。


 例2)「今、すごく大変なんです。でも半年後には発売しますので……」

  →
    開発さんによっては、
    開発スケジュールを伏せたい場合があるので、
    避けたほうがいいです。


 「この程度の発言で問題になるの?」と、
驚かれてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 その発言が問題かどうかをチェックするのは、
発言している側ではなく、関わっている会社の方々です。

 特に未発表、未発売のタイトルには、
ユーザーのみなさんに知らせていく段取りとなる
「宣伝計画」や、それにより期待される「宣伝効果」
というものがあります。

 内容を部分的に伏せてミステリアスにしてみたり、
有名な開発者さんのお名前だけを前に出したりして、
情報を公開する順番があるわけですね。

 そんな中で、開発者がポロッと発言してしまうと、
宣伝計画が狂ってしまうこともあるのです。

 開発は、チームで挑む仕事です。

 スタンドプレイで、みんなの仕事を壊してしまうのは、
やってはいけないことですよね。
 情報の取り扱いには重々お気をつけ下さい。



 なによりゲームは、遊んで下さるユーザーさんのものです。

 楽しみに待っていらっしゃるユーザーさんのためにも、
作品を大切に届けるようにしましょう。

|

2012年5月 5日 (土)

2012桜ツイートまとめ

最近あったいいこと。
我が子とお出かけ中のこと。
「おかしゃん、さくら!」
やっと花の名前を覚えた我が子が、満開の桜並木を見上げた。
「きれいね」「うん!」と、一陣の風が吹き抜ける。
「あ…」舞い散る花びらを見つめ、我が子が悲しげな顔をする。
花を惜しむ気持ちがあるんだね。
成長を感じる春。


最近あったいいこと。
我が子を自転車で送ってからの帰り道。
我が子がいなくなった自転車はひどく軽い。
頼りないハンドルを握って、桜並木を走る。
花吹雪を浴びながら思う。これが自分、一人分の重さか…。
お母さんになってから、ひとりの時間に焦がれる日もあるけれど、
やっぱり君がいないと寂しいや。


最近あったいいこと。
我が子を自転車で迎えに行った時のこと。
我が子をひょいと抱えて、チャイルドシートに乗せると、
「おかしゃん、みて!」と我が子が指さした。
見れば、シートに花びらが積もっている。
「さくら!」「ほんと、きれいね」君を思って走った桜並木。
空っぽの座席に素敵なおみやげだね。


誰かを思うことで心は広がる。
誰かを失うことで心は空っぽになる。
でも、この空っぽのチャイルドシートに積もった花びらのように、
誰かを思っている心には、たくさんのことが降り積もるのだと思う。


こんな自分にも、花びらは降り注ぐ。
桜の終わりは、世界と自分と、ひっそりと向きあうにはちょうどいい。


降り注ぐ花びらを見つめる我が子。
「桜、散っちゃったね」と声をかけると、「どして?どしたら?」
どうして花が散るの?どうしたら花が散らないですむの?、
と聞いているのだ。
「花は散るよ。でも雪みたいできれいね」と言うと「ゆき!」と笑う。
楽しかった冬の思い出が、春が過ぎる悲しみを和らげる。


桜が散って、春の終わりを知る。
惜しげなくこの身に降り注ぐ花びらは、
花の命の終わり――死の断片だ。
無数の死をくぐって私は、命を思う。
今年もまた、この世界に生きることを許されたのだ。
来年まで、さよなら。
さあ、ここからが、一年の始まりだ。

|

« 2012年4月 | トップページ | 2012年6月 »