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2012年4月 8日 (日)

お仕事拝見!ゲーム開発の流れ(2)

前回、「お仕事拝見!ゲーム開発の流れ(1)」の続きです。

(4)チームはどうスタートするのか?

経営の側の人たちとの激しいバトルの結果、
企画書が通って、OKとなった場合。

ここでやっと開発スタート!となって、雲の上の話から、
下界に降りてきて、一介の開発者も参加できる……、
というわけではなかったりします。

すぐに開発がスタートするわけではないのです。
チームが、すぐには作れないことになっています。

これにも、様々な理由があるのですが、
一番大きい理由は人がいないということです。

「人がいないってどういうこと?」って、
そう思う方もいらっしゃるかと思います。

人がいないその理由……
みなさんは見当がつくでしょうか?




正解は、開発者のみなさんが他のタイトルを開発中だからです。

だいたいの開発会社は、
開発者を遊ばせないようにしています。
開発現場では常に、何かが作られています。

場合によっては、
複数のタイトルを掛け持ちする方もいます。

すると、新しい企画を立ち上げるその時期にも、
開発では、何か作っていたりします。
みんなが何か作ってるので、
すぐに大人数を揃えられないわけなんです。

人がいないのに新しいチームを立ち上げなければならない。
その場合どうなるかというと、少数精鋭で、ということになります。

企画を通した有名クリエータやベテランさんが、
チームにどうしても入れたいという人を召喚します。
2、3名という場合もあります。

ここで、少人数ながらチームが立ち上がります。
いわゆる、『小チーム』というものです。



(5)ゲームはどう作り始めるのか?

企画書が通り、小チームが出来ました。
さあ、いよいよゲーム作りです!

といいたいところなのですが……、
まだまだ道のりは遠いです。

すぐにゲーム作りに取りかかれないのは、
やはり人がいないためです。

RPGは大量のデータを必要としますので、
制作にはそれ相応の人数が必要になります。

会社の制作スタイルや、作る内容にもよりますが、
最低でも15名くらいは欲しいところではないかと思います。

そこで、小チームは、
いきなり本格的な制作に入るのではなく、
企画書を元にしたゲームの根幹作りに入ります。

本格的なゲーム制作に入る前の準備段階――、
これが『プリプロダクション』と呼ばれるものです。

小チームで挑むプリプロでは、
一番売りになるシステムや遊べる部分、
あるいは、どんな風に企画が転んでも使えるだろうという基本、
そういったどう転んでも無駄のない箇所に手をつけていきます。

ここで、第二の試練が来ます。
創り上げたゲームの一部分、ゲームの原型を発表し、
「本当にこのゲームを作るべきなのか?」を問われます。
判断するのは、経営側の方々です。

製品として、あるいは作品として、
勝機が見えない場合、ここで企画は潰れます。

つまり、本当の意味で、
この新企画はまだ通ってはいないのです。

これは、相当に厳しいチェックになります。

そこで、イメージ映像などを作って、
もう一度、経営陣のハートを掴みにいきます。

しかし、ゲーム性やイメージ映像が、どんなに面白くできていても、
それとは関係ないところで企画が流れてしまう場合もあります。

例えば、
他のタイトルの続編を作ることになったので人数を裂けない……。
例えば、
他のタイトルの開発が遅れているので、人数をそちらに割く……。

そんなことになってしまえば、小チームは即解散となります。
個人の努力や才能では、もはやどうしようもないです。
ゲーム開発には、そういうめぐり合わせがあります。


ちょっと脱線します。
実は、私も小チームに参加していました。

その企画を聞いて、
数分で魔法にかかったようになってしまいました。
新しい面白さに満ちた企画でした。

チームも本当に気持ちのよい、ゲーム好きな人たちが集まっていて、
ゲームと向き合う楽しさを取り戻してくれた、そんな場所でした。

残念ながら、企画内容とはまったく別な理由から、
チームの存続を認められなくなりました。

私は、あのワクワクするようなゲームを越えるものを、
他の企画書から感じたことはありません。

一言で言えば、挑戦。
挑戦的なゲームでしたね。
既存ゲームの何にも似ていない。

つまりゲーム性での勝負、純粋な面白さでの勝負でした。

こういうものが世に出て欲しいと思っています。
何かに似てるとか、何かの続編とかではなく……。
切にそう願っています。



(6)正式始動

話を戻しまして……。

企画書が通り、
小チームで作ったイメージ映像なり、遊べる部分なりも好評で、
たまたま他のタイトルとも人の取り合いにならず、
既存の発売タイトルも好調で、会社も傾かなかったとして……。

ここでようやく、「作ってよし!」と承認がおります。
いよいよ正式始動です。


「新しい企画が通り、チームが立ち上がったんだ」と、
みんなに知れ渡り、やっとここで一介の開発者さんも、
開発に参加するチャンスが巡ってきます。

そして、人の取り合い合戦が始まるわけです。

新チームに、はじめに声がかかる開発者というのは、
やはり優秀な人というイメージがあります。

しかし実際は優秀だとしても、
すぐにチームに呼ばれるかどうかはわからないのです。

まず、自分が組んだことのある人じゃないと、
評判通りの能力がある人なのかわからないから、
というのがあります。

開発者の能力というのは、
開発者同士ですら把握しにくいものなのです。
そのため、知っている人同士の方が組みやすく、
呼ばれやすくなります。

それから、これは意外かもしれませんが、
「この人はなにを作れる?」という職人的な技術よりも、
穏やかだったり、気立ての良さだったりという、
人柄が買われることがあります。

RPGは、大量の物量を
長い期間かけて作り込んで組み上げるものです。
二年間近く、もしくはもっと長い時間、
そのチームで戦っていくわけですから、仲間として、
気持ちいい人に入って欲しいものなんです。

もし、現在、開発者を目指している方で、
自分がこれという絵が描けないとか、
一流のプログラマーにはなれそうにないとか、
そういうところで、モヤモヤしている方がいるなら、
それは杞憂ではないかなと思います。

今はフリーで活躍する開発者さんや、あるいは、
部分部分を請け負って開発をしてらっしゃる
専門性の高い会社さんもあります。
専門性という部分が、外に出ているのです。

なので必ずしも、みんながみんな、
専門性が高い職人でなければならない、
というわけではありません。

職人さんたちの間を取り持ったり、
職人さんの出すものの品質や、職人さん自身のテンションを
コントロールしたりという、
編集やマネージャー能力が高いひとも大切になっています。

それと大量のデータを、さばく人たちも非常に重要です。
力技で、でも品質も維持して、ものすごい量を作り出す人がいます。
そういう人が、大きな戦力になります。

こういうタイプの方々を『データパンチャー』と言うこともありますが、
よく間違われているのが、こういうひとたちは手足だという考えです。

データを作る方々は、手足ではなく、頭脳です。
武器のデータひとつとっても、バランスというものがありますから、
大量に作っていくものはすべて、全体を見て、関連性を見て、
これぞというものを差し込んでいかねばなりません。

ゲームが理解できていて、視野が広く、
しかもその担当箇所について熟知していなければ、
そんな大量のデータを安心しては任せられません。

たくさんの要素が複雑に絡みあうRPG開発において、
「これやっといて」の一言で、
期待したもの以上のクオリティの成果物を、
納期に間に合わせられる人というのは、
やはり一種の天才です。

センスがある、論理がある。
しかも、同時並行して様々な物事を破綻なく進められる。
そういう器用でパワフルな方でなければ、
大量のデータを任せることなどできません。

そして、そういう人にアウトプットの末端を
コントロールしてもらわないことには、
作業の質も、作品の質も低下していく一方なのです。

職人ではない=管理職に向く、ではないように、
人を管理できる人、現場で物量を任せられる人、
そういうタイプの人々は、これこれこういう人……、
というのをゲームに関わる人は、
そろそろ明確にしないといけないと思います。

そんなわけで、開発チームが発足して、
人狩りやスカウトや、情け容赦ない人事異動が始まって、
ベテランさん、職人さん、人の管理に長けた人や、
大量の物量をさばける百人力のデータパンチャーさん、
などが召喚されてきます。

そうして、今度のゲームはなにするんだ?
なにが果たされればゴールなのか?、
それって面白いのか?、などなどを話しあい、
時にぶつかりあいながら、作品を叩き上げていくことになります。

ここから先の開発の流れは、
また機会があれば、お話ししたいと思います。





(7)さいごに、開発の矛盾と未来について

駆け足ですが、
ゲームの始まりの一歩からチーム発足まで、
お話してきました。

ゲーム開発と聞いて思い描いていたものと、
少し違う部分があるのではないかと思います。

特に、ゲームを作ってお金を頂いている会社なのに、
ゲームの面白さを純粋に追求できない、
そんな場面があるところなどが、
意外だったのではないかと思います。

ゲームなんだから、ゲームを面白く。
これではダメなのでしょうか?
なにか、モヤモヤとしたものがありますよね。

それで、最後にそのへんに触れておこうと思います。

ゲーム好きな方が思い描いているゲーム作りの開発現場というのは、
ゲームの面白さを追求していき、それに対して、
どこかがジャッジをして、よし、これでいこう!、
こんな流れではないかと思います。

なぜ、これができないのかというと、
「(1)ゲームは誰から始まるか?」でお話したとおり、
ゲームの始まりが「面白いゲームを作ろう!」ではないからです。
一定時期にゲームを作らなければ会社が維持できません。
そこが大きな問題なわけです。

会社である以上、それは当然といえば当然です。
でも少し、角度を変えて考えてみます。

ある食品メーカーさんのお話です。
とある新しい食品開発に数年を要し、
途中、何度も「この開発チームは終わりかも」、
と思ったこともあったそうです。

新商品開発というのは、何年もかけて取り組むことである。
しかし、その結果が必ず商品になる、というわけではない。

つまり、そちらのメーカーさんは、
無駄になるかも知れない研究時間を、
実に数年間も取っているのです。

新商品の開発には充分な研究が必要で、
その研究の末、やっと新しくやろうとしていることが、
新商品に相応しいかどうか見えてくるのです。

研究なくして、新しい物が作れないという姿勢ですね。

では、ゲーム開発の場合を振り返ってみます。

ゲーム開発では、開発チームが本格始動となった時点で、
それはもう、よほどのことがないかぎり商品化決定となります。

つまり、開発時間=研究時間、ではないのです。

ゲームの場合は、
開発時間=完成品となる製品版の制作時間、です。
研究時間というのは事実上、ほぼ計上されていません。

部分部分を研究はしますが、そのすぐ隣では、
製品版をノンストップで作っていってるようなものなのです。

そういった意味では、開発チームは、イコール、
即、完成品制作にとりかかる制作チームともいえます。

ここが一番、苦しいところだと思います。
矛盾がある所でもあります。
簡単に解決できないところです。

「研究は小チームの間にすればいい」という方もいますが、
期間は大変短く、バックアップ体制がありません。

開発室とは別に、
研究部門を抱えておられる会社さんもありますが、
まだ一般的ではないように見受けられます。

開発研究部門や開発研究機関が設けられないことで、
ゲーム作りの経験値が企業やチームに蓄積されず、
個人にしか貯まらない、そういう面もあります。

そして、充分な研究時間が取れないことが、
開発現場にめまぐるしいクラッシュ&ビルドをさせてしまいます。
結果、開発の混乱や遅延を生んでしまうこともあるのです。

研究しながら開発していること。
作るべきものを探り試しながらも、もう完成品を作らねばならない。
大いなる矛盾です。

かたわらで台本を書きながら、役者さんを探しているのに、
もうカメラは回っていて映画を撮影し始めてる……、
というような、そんな混乱があります。

この部分がもうちょっと、どうにかなってくれると、
良いなあと思っています。

たとえば、
研究して「これは面白い!」というものがあれば、
「こう作ればいい」というところまで探っておいて、
それをストックしておく。

そして、会社を維持するために売るものを作らねばならない
その時になって、ストックしていたものを再検討し、
今の時流のものに多少アレンジして、順に開発していく……。
とか、そういうことかなあ、なんて思っています。

また、今は開発会社のあり方も変わってきていて、
まるまる全てを自社開発する、というスタイルだけでは、
なくなりました。

多くの作品が、外部の企業や
フリーのスタッフと協力して作っています。

部分的に受注する会社は、任された部分の品質管理と、
それを納品するまでのスケジュール管理をします。
一時期、肥大化してしまった開発が、
コンパクトに切り分けられたような感じです。

企業体力は弱くなったかも知れませんが、
贅肉をそぎ落としたように、小回りがきくようになったとも言えます。
オールマイティーな開発者も姿を消しましたが、
その分、部分職人たちの専門性が強くなりました。

複数企業や組織の共同開発。
そうなると、絶え間ないクラッシュ&ビルドではなく、
はっきりと「これを創る!」というものに向けた
協力体制になっていきます。

もしかしたら、こういった面からも、
面白いと思われるゲーム性の検証やアイデアの具現化は、
必須になってくるかもしれません。

開発もナマモノです。
生きた人間が創り上げる場所ですから、日々変わります。
私がお話ししたようなことだけではなく、
もっともっと新しい変化が起きるかも知れません。

これからゲーム業界に入るみなさんや、
あるいは今、若手で頑張ってらっしゃる方々が、
面白いと思う方向に、少しずつ舵を切っていくのだと思います。
若い方の作られる新しい開発を、私は楽しみにしています。



色々お話ししましたが、
これは私の経験から来る、私の思いですので、
違う考え方、作り方、様々にあると思っています。

以上、新しいゲーム企画の始まりから、
企画書作り、小チーム、本チーム発足の流れでした。

最後までおつきあい頂き、ありがとうございました。

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