ことばのむこう
おやつに一番大きなクッキーを手にして、
「これ、おーきしぎるー!(これ大きすぎる!)」
と、笑う。
お兄ちゃんたちと一緒で楽しかったね、と言うと、
「おにーた、いっしょ、うーむ、うーむ……。
(おにーちゃん、いっしょに……)」
と、言葉につまる。
お花を見ると、
「ぱんぽぽー!(たんぽぽ!)」
でも、本当はつつじ。
どうして、大きすぎるクッキーを手にするのか?
どうして、楽しかったことなのに言いよどんでしまうのか?
どうして、つつじがたんぽぽなのか?
それは、そこに気持ちがあるから。
大きなクッキーを手にするのは、ママと分けて食べたいから。
言いよどんでしまうのは、遊んだ記憶があまりにも楽しすぎて、
うまく言葉に出来なくて、もどかしいから。
つつじがたんぽぽになるのは、
たんぽぽの中でお友だちと遊んだのを覚えているから。
子どもを見ていると、
言葉はそこにあるものだけを指しているのではないとわかる。
背後には、大切な思い出が重なりあっている。
正確に気持ちを伝えることの大切さを学んでいくに連れ、
こうした会話も、言葉通りのものに置き換わっていくのかもしれない。
そうして、私たちはおとなになったのかもしれない。
大人同士の会話では忘れてしまうことを、
子どもたちは教えてくれている気がする。
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