欲しい痛み
時々、思い立ったように自転車をこぎに行く。
公園の貸し出し自転車で、なんのてらいもないものだ。
運転免許を持たない私にとって、
自転車は唯一、自分の意志で自分を動かす乗り物だ。
子供を前カゴに乗せて、無心にペダルを踏み込む。
前へ、前へ、前へ――。
私の力で、私を連れて行け。
もっと遠くに。新しい景色の中に。
そうして即日、ひどい筋肉痛になる。
でも、この痛みがいい。
この痛みがある限り私は、なにかの助けを借りながらも、
自分の力で走ることをやめていない。
人生もこのようであれ、と思う。
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