しあわせを運ぶ
「ツバメちゃんが来てくれたんですよ」
主人のお義母さまからメールが来ました。
もう今年は来ないのではと、諦めていたそうです。
「なんかへんだぞ」と、引き返してしまうのではないかと。
それが、いつもと変わらずに来てくれたそうです。
お義母さまは、とっても喜んでいました。
いただいたメールを読みながら、
私の心は過去に戻っていきます――。
思い出すのです。
福島で見た、青々とした山の稜線を。
どこまでも広がっていく、緑の田畑を。
吹き渡る清々しい風の中、
ツバメたちがのびやかに飛ぶ姿を。
「美和ちゃん、知ってる?
ツバメは幸せを運んで来るんですって」
あの時、飛び回るツバメを見ながら、
お義母さんに聞いたお話を思い出しました。
私の心は、現在へと戻って――。
お義母さまの住む、福島へと思いを馳せます。
青空を飛ぶ、藍色のちいさな姿に
勇気づけられる人々がいるのでしょうか?
涙を零す人々がいるのでしょうか?
そうして彼の地を思いながら、私は思ってしまうのです。
あなたがたのものでもある大気を、海を、
こんなにも汚してしまって申し訳ありません。
この胸を締め付ける思いの正体が、なんなのか。
願いなのか、祈りなのか――。
怒りなのか、悲しみなのか――。
いろいろな感情が混じり合っています。
謝っても仕方がないのに、謝ったってなにも変わらないのに、
どうしても言ってしまうのです。
「ごめんなさい。でも、ありがとう……」
その思いを、口にしたくなるのです。
「きっと、美しい福島を取り戻すから、待ってて」――と。
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