なんでもない風景
久しぶりに、子どもを連れて公園に行きました。
親子連れや子どもたちだけのグループもあって、
公園は賑やかです。
さっそくボールを蹴って、我が子と遊びます。
すると、小学生くらいの男の子ふたりが、
かわりばんこにおんぶしながら歩いてきました。
我が子は、お兄ちゃんたちの様子にびっくりして
目を丸くして固まってしまいました。
「こんにちは」と私が言うと、
「こんにちは!」と元気な声が返ってきました。
「俺たち、同じ体重なんだよ!」
「そうそう」
「こんなに身長違うのに!」
と、ふたりはわざわざ私の前に並んでくれて、
身長差を見せてくれました。
たしかに、二十センチくらいは、
背の高さが違うように見えます。
「(おんぶしてるのは)訓練なんだ」と、男の子たち。
「力持ちなのね!」と言って、手を振って見送りました。
何の訓練かはわからなかったけれど、
男の子たちがかわりばんこにおんぶして、
仲良く呼吸を合わせ、にじにじと歩いて行く姿は
微笑ましかったです。
しばらくボールを蹴っていると、今度は、
蹴ったボールがリフティング中の少年のところに
転がっていきました。
トレーニング用のユニフォームもばっちり決まった少年は、
見たところ高校生のようです。
その子が長い足で華麗にサッカーボルを操り、
足首の上で止めてみせたり、
高く蹴りあげて足で受け止めたりするので、
我が子はまたびっくりしてして固まっていました。
同じボールを蹴っているのにどうしてなのだろう?
と、考えているらしいのですが、出した結論が――。
我が子「しろとくろの、うーむ、ほしいの~」
訳すと、「白と黒のボール、とっても欲しいの」。
うーむというのは、どうやら
「はやく」とか「もっと」とか「いっぱい」とか、
なにかを強調するときに使われるようです。
とにかく我が子は自分でも
サッカーボルを蹴ってみたくなったらしいのですが、
少年は本気で練習中だったようなので、
おじゃまするのは申し訳ありません。
そこで、我が子の気持ちを逸らそうと、
今度はボールを遠くに蹴ってみました。
すると、その先には、
風船をふくらませて遊んでる小さな女の子と
そのご両親の姿がありました。
女の子は、ちょうど我が子と同い年くらいのようです。
我が子「ふーせん、うーむ! ふーせん!」
訳すまでもないのですが、
「風船、欲しい! 風船!」という感じでしょうか。
こっちにも欲しいものがあったのね……。
と、私はまた別な場所へボールを蹴ります。
すると、今度は小型のワンちゃんが
サッとボールに飛び出してきました。
公園では放し飼い禁止なので、
ワンちゃんはリードに繋がれています。
なので、ワンちゃんは、
ボールに駆け寄ったそのままの勢いで、
飼い主さんを中心に円を描くようにして、
すーっと去って行ってしまいました。
その様子がまた微笑ましくて、
飼い主の方と笑って会釈します。
我が子は突如現れ、
風の様に去っていったワンちゃんを見て、
また目を丸くしてびっくり顔です。
主人「そろそろ買い物にいくよー!」
主人が呼びに来る頃には、
我が子はすっかりふらふらでした。
久しぶりの外遊びに、
おもいっきりはしゃいだのでしょう。
帰り道は、我が子と主人と私と、
親子三人で手をつないで行きます。
生田「マスクしている人少なかったね」
主人「うん」
生田「あんなことがあったなんて、嘘みたい……」
主人「うん」
我が子と主人がボール遊びする写真を、
今も避難所で過ごす、お義母さんに送りました。
こんな、どこにでもありそうな、なんでもない風景が、
私たち家族にとっては、心の支えです。
すべてのご家庭にこんな、
なんでもない風景がもどって欲しい。
それだけでいいのにと、そう思ってしまうのです。
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