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2010年12月31日 (金)

だからゲームが好き

時々「生田さんはどうしてゲームが好きなの?」と
質問されることがあります。

その答えになるかわからないのですが、
少しゲームへの気持ちを書いておきたいと思います。

ゲームの開発は、
色んなタイプのプロの開発者が集まって動いていきます。

絵を書く人。
プログラムを組む人。
それらを組み合わせて、新しい遊びを生み出す人。
お話や世界観を工夫して、メッセージを込める人。

そしてゲームを宣伝し、
皆さんの手元に届けようということになれば、
営業や事務やもっと大勢の方が関わっていきます。

ゲーム作りには、多くの方の選択と行動が詰まっています。

一年~二年半もかかる開発なら、
もはやそれは人生の一部分を共有しているようなものです。

そのプロジェクトの中で、
個人個人の思惑はそれぞれ違うかも知れません。

スキルを身につけたいとか、
誰それさんと組みたいとか、
お給料を上げたいとか、出世したいとか、
がむしゃらにいい仕事がしたいとか。

でも個人個人の目標は違えど、
大きな目的はユーザーの皆さんに喜んでいただくことです。
運命共同体です。

もちろん、立場の違う大勢の人が、
同時にひとつのゲームに関わっていくために生じる困難、
というものもあります。

例えば、専門職が細分化している今の開発では
開発者同士ですら、お互いのスキルを把握しきれず、
話がこじれることもあります。

でもそんな時、
こいつさえいなければ……とか、
こんな仕事じゃなければ……とか、
そういうふうに考えるのは不毛です。

時間には限りがあり、
そのゲームを開発して良い、という時間は決まっています。
ゲーム作りには時間制限があり、必ず終りが来るのです。

同じように、
ひとりの人間が生きられる時間というのにも限りがあります。
ゲームを作るチームにも、人間にも、
この世界に存在するすべてのものには、
寿命があるのです。

自分が生きて働いていられる時間には限りがあり、
それゆえ関われるゲームの本数もおおよそ決まっています。

そんな二重の時間の制約がある中で、
偶然か必然かわかりませんが、集まってきたメンバーなのです。
誰一人欠けても開発は成り立たないはずです。

そしてなにより、
遊んでくれたユーザーの皆さんの心の働きがあって
はじめてゲームの物語は完成します。

ユーザーの皆さんの心が、
ただのデータを実体験として、心の中に刻んでいくのです。

最後は開発者の手さえ離れて、旅立っていくゲームなのです。
ゲームは、まだ見ぬ遠い誰かの幸せや喜びを願う気持で
作られているのです。

ゲーム開発だけではなく、家庭や友人関係も同じだと思います。

ここにいる人たち、今知りあえている、
このメンバーがベストメンバーであると信じて、
このメンバーだからこそできるという幸せを
みんなで模索していくのです。

そしてそれは巡り巡って色んな人の幸せにつながっていく。

大勢の人間が関わることから生じる問題を、
乗り越えたときの喜びは大きいです。

誰かと分かり合えたときの幸せ、
誰かを楽しませることの喜び。

マスターアップ直後は
「あいつの顔なんか見たくない!」なんて怒っていても、
しばらくすれば、
みんなへの感謝と尊敬があふれてくるものです。

ゲームはその存在や仕組みそのものが、
人生について大きなヒントをくれていると思います。

私はゲームが好きです。

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