おはなしするよ?
あかちゃんが言葉をしゃべるようになってきた。
公園で鳩を見ていると――、
「あと!(はと!)」
「そう、鳩さんね」
冷蔵庫の側に行って――
「こり!(こおり!)」
「氷欲しいのね? はいはい」
毎日、楽しそうにおしゃべりしてくれるのだけれど、
今朝は起きてすぐ、火が付いたように泣き出してしまった。
「うぎゃ~!」
「どうしたの? 悪い夢でもみたかな?」
と、あかちゃんは私を見て、きょとんとし、
きょろきょろと、あたりを見渡して、
「たお、あた!(タオル、あった!)」
「うん、タオルあったねえ」
タオルを受け取って、私がうなずくと、
にこにこ笑顔で、また別のタオルをたぐり寄せ、
「たお!(タオル!)」
「うん、もひとつあったねえ」
と、私がタオルを受け取ると、
また、きょろきょろと何かを探しはじめ、
何も見当たらないと気づくと、私を見て、
「およ(おはよ)」
「うん、おはよう!」
「えへ……」
「ん???」
どうやら、あかちゃんは、
私がいないと思って泣いてはみたけれど、
すぐ隣にいたので、照れくさくなってしまったようだ。
こんなちっちゃなあかちゃんでも、その胸の中には、
とっても複雑な感情があふれている。
その言葉を追いかけるだけでは、
本当の気持ちにはけっしてたどり着けない。
行間を読む能力というか、観察して推理する力が必要だ。
ドラマの探偵か刑事さんみたいだな。
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