うつる気持ち
赤ちゃんと一緒に動物園でニワトリを見ていたら、
小さな女の子がやってきて、檻にピタッとはりついた。
女の子は、その場所を独占するみたいに
両手をいっぱいに広げてニワトリを見ている。
すると、
「赤ちゃんと一緒に見なさい」
と、優しい声がした。
女の子のおばあちゃんだった。
うん、と女の子はうなずいて、うちの赤ちゃんに、
「一緒に見よう。コケコッコだよ」
と言う。
うちの赤ちゃんはとたんに恥ずかしくなって、
私の足にからみつき、足の間にぐいぐい顔を押し付けて、
一生懸命、隠れようとする。
「なにしてるの?」
と女の子。
「恥ずかしくて隠れてるのよ」
と、答えると、
「ふうん」
と女の子は、珍しそうに、また赤ちゃんを見る。
赤ちゃんは、恥ずかしさが頂点らしく、両手を広げて、
「ん!(だっこ!)」
と、だっこをせがむ。
「あら、だっこなの?」
と、ひょいと抱える。
すると、女の子が、
「おばあちゃん、だっこ」
「まあ、あなたもなの? 重たいのに~」
そう言いながらも、おばあちゃんは笑顔。
二歳半だというその女の子とおばあちゃんは、
よくこの動物園に来るという。
「ここは本当にいい街よ。
公園も近いし、動物園もあるし、この子といっぱい遊べるもの。
私、この町が大好きでね」
しばし話が弾む。
目を細めて、にこやかに話すおばあちゃんを見て、
また、この街が好きになった。
写真は、今日のおやつ。
生まれ育った町を訪ねたとき、
お土産に生協で買った薄力粉で作ったケーキ。
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