おとなりさん
「わたしね、いつもはね、
あやちゃんと、よしえちゃんと、なおこちゃんと遊んでるんだよ」
「へえ~。お友達いっぱいいだね」
「そうなの。わたしいつも女の子と遊ぶの。
男の子とは遊びたくないの」
「どうして?」
「わたし男の子嫌いなの。だから男の子と遊びたくないんだ」
「そうなんだ」
「でも、サトー君はわたしの靴踏んでくるの」
「踏まれちゃうの? どうして?」
「うん。たぶんね、前ね、わたしが間違って、
サトウ君の靴、踏んじゃったからじゃないかな」
「じゃあ、ふざけてるのかな?」
「そう! ふざけてる! そうなの! ふざけてるの!」
彼女は大きな瞳をきらきらさせて、「ふざけてる!」と、繰り返していた。
その言葉が、彼女の中でぴったり当てはまったのだろう。
秋晴れの気持ちの良い休日のことだった。
子供と一緒にブランコに乗っていると、
おとなりのブランコに、颯爽と駆け込んできた女の子がいたのだ。
ぎーこぎーこと、ブランコをこぐたび、話に花が咲く。
「でもね、わたし、来年は小学生なんだ」
「もう、お姉ちゃんなんだね。学校楽しみだね」
「うん。
でも、あやちゃんたちはみんな同じ小学校だけど、
わたしだけ違うところの学校行くんだ」
と、突然、そこまで元気いっぱいだったおしゃべりは曇り空になった。
「じゃあ、ちょっとさみしいね」
「うん。ちょっとさみしいんだ。じゃあね!」
ぴょんっとブランコを飛び降りると、
曇り空の顔は、またころっと変わって、晴れやかな顔になる。
いっぱいお話して、来たときと同じように、
ひゅーっと風のように走って行ってしまった彼女。
むこうでお母さんが呼んでいる。
来年、小学一年生になった彼女は、
きっとまたいっぱいのお友達を作るに違いない。
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