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2007年9月 6日 (木)

生きるべきだ

なんと、海で遊んだその日の夜……。
私は、激しい腹痛と嘔吐で、
病院に担ぎ込まれてしまったのでした。

原因は不明。

夜間は緊急手当てを受けましたが症状は緩和せず、
翌日、あらためて検査することにしました。

翌朝、妙に重たく感じられる体を引きずって病院に行くと、
たいへん紳士的な優しい先生が慎重に診てくださいました。



「これは、急性腸炎ですね。すぐ点滴しましょう」

「は、はい……(嫌だなあ、点滴の針、刺されるの)」

と、点滴の痛さと怖さだけで倒れたこともあるくらい、
痛みに敏感な私がブルーになっていると、



「レントゲンで見たところ、
 何かが引っかかっているわけではないので、


 手術の必要はないと思いますが」



「え? 手術!?

「まあ、場合によっては、


 鼻から腸まで管を通しましてね


 ガスを抜いたり、
 悪い汁を抜いたりする必要があるかも……
 ……。



 まあ、ちょっと苦しいんですがね



ちょっ、ちょっと?


 鼻から管がっ!? ちょっと!?


 ソレ、ちょとってことないだろーっ!?



ジェントルマンの口から、出るわ、出るわ、恐怖の呪文。

この時点で、私の小動物な心臓はバクバク。
40度近くの熱も手伝って、意識は朦朧。



「まあ、ともかく、すぐに入院された方がいいです」

う、うそー!!!!

そんなわけで、


鼻から管に脅えつつ……、


なんと九日間も入院していました。



家族や友人と離れた慣れない町で、
ひとりぼっちで病院に居る時の心細さといったらありません。

毎日、顔を出してくれる主人と、
主人が持ってきてくれる家族からの手紙、
そして、同室の女性ふたりにとても励まされました。

ひとりは、90歳になられる上品なご夫人でした。
戦争のこと、ご主人のこと、お孫さんのことなど、
色々話してくださいました。



「私は、あの時の辛さを思うとね、
 なんでも耐えられるし、頑張れるなあ、と思えるのよ」

もうひとりは、二十代の女性です。
彼女の病気は難しくて、私にはよくわかりませんでした。
その苦しみや痛みも、想像を絶するものがありました。
彼女は、その痛みに、静かに耐えているのです。



「こんなに痛いと、
 自分が悪いことしたんじゃないかと思ってしまう。
 それで罰を受けてるんじゃないかって、思ってしまう……。

 でも、私は、きっと元気になれると思ってる。
 それに、痛い思いをしているひとほど、人の痛みもわかるから。
 この痛みは無駄じゃない」

明るくてまっすぐな彼女の人柄は、
いつでも病室を優しい雰囲気にしてくれました。
彼女に病気になるような理由なんか、ないのです。
罰を受けるようなことなんか、少しもないのです。



寝つけない夜、色々なことを考えました。

病気は何故、人を選ばないのかということ。
何故、健康に気をつけて、体を鍛えていても、
病気になってしまうのかということ。

私たちに出来ることは、定期的な検査による早期発見。
そして早期治療……。

でも自分が健康でも、愛する人が病気になってしまったら?
その痛みを代わってあげることは、出来ないのです。

高熱に浮かされながら、辿り着いた結論は、
誰だって、とにかく生きていくべきじゃないのか——
ということでした。

一方的にやって来る病気に、
人生を目茶苦茶にされていいはずがないのです。

だから、絶対にみんなで、元気に生きていきたい。
そんなことを強く感じました。


070901


写真は、入院中にいただいた励ましメールからです。
蝶が好きな私にと、蝶の写真をたくさんいただきました。
不思議なことに、このアゲハチョウ、40分以上もこうしていたそうです。
まるで思いが通じているみたいに、逃げないでいてくれたのです。

病気は辛かったけれど、
いろんなひとの温かさに支えられた入院生活でした。

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